国の工賃単価(レバレート)調査の発表間近!何が変わるのか
自動車修理の鈑金塗装工場を支援するサービスを展開する、
フロントアカデミアの佐野でございます。
本記事では、業界が期待している国の調査結果発表に対し、
「国が変えてくれるのではない、工場が変わる必要がある」
という記事となります。
国の調査とは
車体整備事業者による事故車修理の適切な価格交渉の促進のための施策として、
令和7年3月4日、国土交通省が車体整備業界の賃上げ・人材不足解消に向け、予算をかけて調査を進めています。
そして、その発表が2026年6月にされるという事なのですが、
22日現在、まだされておりません!
様々な指針や損害保険協会からのガイドラインが出ており、
「保険会社の態度が変化した」「協定に時間がかからなくなった」
といった話を聞く事も増えていたのではないでしょうか。
それでは、私、佐野が調査の発表で何が変わるか予想していきたいと思います。
結論:(すぐには)何も変わらないのでは
国の調査に意味が無かった・・・というわけではありません。
国が調査するのは、「作業時間として広く使われている指数が妥当かどうか」「工賃単価が妥当かどうか」という事だと考えられます。
それぞれの問題点について考えてみましょう。
指数が妥当ではないという発表があると、どうなるのか
指数の成り立ちや指数自体の問題点はさておき、指数が妥当かどうか国が調査をすることの問題点を考えます。
仮に指数に妥当性が無かったとして、多くの修理工場はどうするのでしょうか。
システム会社はどうするのでしょうか。
- 自研センター指数を搭載しない?
- システム会社が独自指数を構築する?
- 現代の車両に合っているとは言えない古い工数表を持ち出して「こっちの方が実態に近い!」と言う?
- それをシステムに搭載する事を売り文句にする?
アジャスターはどうなるのでしょうか。
指数を使わなくなる?使えなくなる?
そんな事はありませんね。指数が妥当でないということは、あくまで、
指数という「標準作業時間」が「標準作業時間ではなかった」と判明するだけで、
他に使える工数(標準作業時間)が無いのであれば、指数が使われることに変わりは無いでしょう。
余談ですが、指数について詳しい方は「標準作業時間ではなかった」と判明することに全く意味がない事をご存知のはず・・・
そもそも、自研センターは標準作業時間ではないと説明していたんですよね。
それでも、長期間指数を強要されていなかったのに、指数を使ってきたのは修理工場です。
指数を使っているから工場経営が出来ないなら、工賃単価を上げるしかありません。
工賃単価が妥当ではない場合、どうなるのか
工賃単価というものは、最終的な技術料(サービス料)を算出するための数値でしかありません。
仮に「適切な工数」と「適切な工賃単価」を用いて、周囲の工場より2倍も3倍も高ければ、顧客・市場に受け入れられるはずがありません。
重要なのは、
「どの工数を用いて、結局技術料がいくらになるのか」
「その技術料で顧客は納得して仕事を依頼するのか」
という事になります。
たとえば、需要と供給・立地によって同じ商品が全く別の金額になるのは当然ですが、
そこに「お客様対応」「サービス」「店構え」「修理技術・品質」「修理保障」「設備」といった要素まで加わると、
地域によって一律の工賃単価を設定することに無理が生じます。
「保険会社の考える工賃単価は、妥当ではありませんでした!」
という国の結果は見なくとも決まっています。
細分化する努力を怠り、都道府県ごとに工賃単価を分けている時点で、妥当という結果なはずがありません。
工賃単価が上げやすくなったとして、いくらにするのが適切だと考えているのでしょうか。
自社レバレートを算出せず、周りがこうだから、あそこがいくらだからという決め方では、
国が予算をかけて調査しても、修理工場にとってメリットのある内容にはなりません。
これまでの指数と工賃単価で、経営出来ていたのか?
残念ながら、板金塗装工場(車体整備工場)の経営実態の統計はほとんどありません。
特定整備のおかげで、多くの修理工場が自動車整備認証資格を取得していると仮定すると、
JASCAの経営実態のデータを参考にすることができます。
このデータより、自動車整備業における「健全な会社」の売上高対営業利益率は3.1%、「総平均」で2.7%となっています。
自動車整備業界の利益率は低すぎて危険
利益率が健全な会社で3.1%だとして、それを目標に設定するのは適切でしょうか。
借入の金利は利益から返していく事となりますので、借入が利益率を圧迫します。
「中小企業実態基本調査(令和4年)」に基づく財務指標では、借入依存度(総資産のうち、どれほどの借入額があるか)は48.7%との事です。
令和4年度の自動車整備業における総資本回転率は1.1回というデータがありますので、総資産を1.1倍すると売上高となります。
また、借入金利は業績が安定している企業で1%前後、債務超過企業が1.6%前後というデータがあるようですので、全体平均を1.2%とします。
データを基にし、売上高を1億円とした平均的モデル企業と、あなたの会社を比べてみてください。
- 売上高1億円、総資産約9,090万円、営業利益率2.7%
- 借入は総資産の48.7%なので、約4,427万円(月商の5.3か月分ほど)
以上のデータから計算すると、営業利益の平均は年間270万円となります。
年間の金利は約53万円。営業利益から金利を引くと220万円も残らないのが業界平均という計算になります。
売上高に対して0.53%が金利となりましたので、20%近くが金利で消える計算となります。
借り入れが多ければ多いほど、金利が高いほど、もっと多くの比率が金利に取られます。
この利益率では、設備の更新や人員の増加、給与アップが出来ず、
「もう辞めてしまおうか」となるのも無理はありません
まとめ:だからこそ、今工場が出来る事
だからこそ、
自社の工賃単価(売値レバレート)を市場任せ・保険会社任せ・地域任せにせず、根拠を持って改定し、
お客様にご納得いただけるだけのサービスや技術を提供すること、
保険会社に論理をもって説明をする事が重要です。
しかし、多くの工場がそれをしてきませんでした。
恐らく、それなりに仕事があれば工場を維持できたという事でしょう。
確かに、多くの修理工場が跡継ぎの問題や周辺環境の変化、特定整備や設備投資の問題で縮小化・廃業の傾向にあり、
しばらくは仕事に困らない可能性もあります。
修理需要に対する供給が減る事は、確かに一時的には健全な経営に寄与しますが、
修理需要の減少も見えている未来です。
お客様に安全と安心を提供し、社会に必要とされる修理工場であり続けるには、
技術力や設備だけでなく、フロント力の強化が必要です。
- 工賃を改定したいが、不安がある
- 工賃を改定したが、保険会社に認められない
- 顧客対応や経営に不安がある
そういった工場のお悩み事を解決できるよう、日々情報収集と発信を行っていきたいと思います。
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